[ぷちレビュー]圧巻!!『宝塚歌劇宙組公演』 感動のミュージカル&躍動のレビュー 2/25(月)まで

 宝塚な2月! 行ってきました、福岡市・博多座に。冬にしては暖かささえ感じた2月4日、開幕3日目の『宝塚歌劇宙組公演』を観劇しました。ミュージカル・プレイ『黒い瞳』と、スーパー・レビュー『VIVA!FESTA! in HAKATA』(ビバフェスタ・イン・ハカタ)の二本立て。率いる宙組トップスター・真風涼帆さんが事前に話していたように、ほんと宝塚らしいラインアップでした。

 文豪プーシキンの「大尉の娘」をモチーフにした『黒い瞳』は、帝政ロシアを舞台にした歴史ロマン。貴族出身の青年軍人ニコライと、大尉の娘マーシャのラブストーリーを軸に描かれます。

 主役のニコライ役はもちろん、トップスター・真風涼帆さん(熊本県出身)。長身の立ち姿は美しさと迫力を兼ね備え、低音から中高音まで自在な声色はセリフに説得力を与え、声量と情感豊かな歌唱は物語の世界に輝きを加えました。まさに、唯一無二。存在感が際立ちました。ニコライは、ノーブレス・オブリージュを体現するような若者。その真摯しんしさや気高さを余すところなく表現すればするほど、一本調子になりそうなところです。しかし真風さんは、まだ青く血気盛んな面を“食い”気味のセリフ回しで強調したり、組長の寿つかささん演じる従僕サヴェーリィチとのユーモラスなやりとりの中にいたわりのニュアンスをそっと差し込んだりと、幅と奥行きのある演技でニコライの人物像を立体的にたちあがらせました。真風さんが言及していた育ちの良さもにじみ、魅力の一つになっていました。

 マーシャ役を務めた宙組トップ娘役・星風まどかさんは、可憐かれんさの中にほのかな色香も漂わせ、まさに舞台を彩りました。所作は指先や足先まで美しく、感情表現は自然ながら実にビビッド、天にも届きそうなソプラノの歌声は神々しさをまとっていました。お年ごろのマーシャは愛らしく天衣無縫。両親に大切に育てられてきました。ただ実は、出生の秘密があり、一人で抱え込んでいます。そんな二面性のある役柄を、星風さんは実にリアルに表現しました。細やかに変化する表情、迫真性のあるセリフ回し、心の内がふと表れるしぐさ……すべてが絶妙でした。印象的だったのは、命がけで女帝エカテリーナⅡ世に直訴する場面。ニコライを一途いちずに思う気持ちが全身からあふれ、胸を打たれました。身を包んだドレスはワインレッド。エカテリーナⅡ世のブルーとの対比も目に焼き付きました。

 トップコンビだけに二人の息はぴったり。何と言っても、プガチョフの乱という歴史の大波にさらされて曲折をたどる純愛を寄り添って守り抜こうとする姿が鮮烈で、会話、抱擁、デュエットなどあらゆる面で「ならでは」のハーモニーを感じました。見どころの一つは、最終盤の再開シーン。駆けてきたニコライ、屋外で腰掛けていたマーシャ。離れた場所にいる相手を同時にみとめたとき、声よりも、動きよりも一瞬先に、心と心が固く結びつくのが見えた気がしました。愛し合う二人だけの特別な魔法……わたくし、小声ながら<恋っていいな>とつぶやいてしまいました。

黒い瞳

 作品を貫くストーリーは、もう一つあります。ロシアに忠誠を誓うニコライと、反乱の首謀者プガチョフの、立場を超えた男の友情です。偶然の出会いをきっかけに、認め合う二人。再会するたびに互いの境遇、ひいては関係性が大きく変化する中、変わらぬフレンドシップが静かな感動を呼びます。プガチョフ役の愛月ひかるさんは威風堂々としたたたずまいが目を引き、野蛮さと優しさをあわせ持つキャラクターを熱演しました。インパクトがあったのはやはり、有名な馬車の中のシーン。並び座った二人が腹を割って語り合う様子は、リリカルな味わいもあり、文字通り見入りました。特に、プガチョフの痛々しいまでの覚悟は、わたくしの琴線に触れました。誤解を恐れずに言えば、そこに二人のさむらいを見ました。

黒い瞳 馬車のシーン

 キャストはもちろん、脚本や演出、照明、大道具などすべてが上質であり、ロシア独特の雰囲気も含めて隙のない仕上がり。当然のように、集中力を切らすことなく、作品世界に浸ることができました。これを観劇のし・あ・わ・せ、と呼びます。呼ぶはずです(笑)。

 休憩をはさんで再び幕が開くと、ステージは一変。明るく陽気なカーニバルの世界が現れました。歌とダンスのスペクタクル! 『VIVA!FESTA! in HAKATA』の始まりです。女性らで埋まった客席は一気に「ハレ」の雰囲気に。大きな手拍子がリズミカルに響きます、右を見ても左を見ても、笑顔、笑顔、笑顔。ヤングからシニアまでだれもが若々しく、夢見るようなまなざしを舞台に向けています。そう、これはもう、理屈は不要。ただただ、「宝塚」ワールドを堪能すればいいのです。そうですよねっ。

 テーマは世界各地のFESTA(祭り)。リオのカーニバルのほか、中欧・北欧に伝わるヴァルプルギスの夜、日本のYOSAKOIソーラン祭りなどがきらびやかに展開されました。自然に体でリズムをとってしまう躍動感あふれる楽曲、エネルギッシュかつ繊細なダンス、ステージと客席を一つにするタカラジェンヌたちのかけ声、タキシード&ドレスから法被までデザインも色彩もバラエティー豊かな衣裳、そしてそして、ファン歓喜の「客席降り」――。んもう、いつどこを“切り取って”も、最高のエンターテインメント。わたくし、五感を解放してエンジョイしました。

VIVA!FESTA! in HAKATA YOSAKOI ソーラン

 ここでも真風さんは、スターならではの特別なオーラを放ち続けました。安定した歌唱で主題の世界観をリードし、長い手足を生かしたダイナミックなダンスでステージに風格を与え、決めの表情で観客をしびれさせました。個人的には後ろ姿にもぐっときました。無言でいて雄弁な背中。ダンディズムの極致だと、わたくしは思うのです。

VIVA!FESTA! in HAKATA

 星風さんは、透明感のあるソプラノとすばらしい声量で客席を魅了。ミュージカルで見せた美しさはそのままに、衣裳も含めてセクシーな一面を見せたかと思えば、YOSAKOIソーランではチャキチャキな雰囲気でかけ声を響かせたりと、“サプライズ”も演出してくれました。まさにステージの華。ファンのハート、わしづかみでした。

 特筆したいのは、要所要所で披露された群舞。歌唱、ダンス、表情――あらゆる面で鍛え抜かれた集団だけが発することのできる特別な波動がほとばしり、観客の熱気と相まってスペクタクルな空間を生み出しました。

 終幕。現実の世界に戻らなきゃ、と席を立ちました。あれっ、体が軽い、心も軽い。きょうあったネガティブなことも忘れられそうなくらいに。……きっと、これが元気をもらった、っていうことなんですよね。劇場のパワー、宝塚のパワー、宙組のパワー。もうね、サンキューの投げキッスを勝手に送っちゃいます♡ 次の公演が待ち遠しい~。

ミュージカル・プレイ『黒い瞳』

 帝政ロシアを舞台に、貴族出身の青年軍人ニコライ(真風涼帆)と、反乱を起こしたコサックの血を引く大尉の娘マーシャ(星風まどか)の純愛を描いた歴史ロマン。動乱に巻き込まれた二人のラブストーリー、反乱の首謀者プガチョフ(愛月ひかる)とニコライの男の友情などが描かれる。ロシアの文豪プーシキンの「大尉の娘」を題材にしており、脚本は柴田侑宏、演出・振付は宝塚OGの謝珠栄。初演は、真琴つばさ率いる月組が1998年に行い、2011年には音月桂を中心とする雪組が全国ツアーで再演、いずれも高い評価を受けた。今回の博多座公演で三度目となる。

スーパー・レビュー『VIVA!FESTA! in HAKATA』

 YOSAKOIソーラン祭りや、リオのカーニバル、中欧・北欧に伝わるヴァルプルギスの夜など、世界各地のFESTA(祭り)をテーマにした、パワーみなぎるショー。宙組が2017年に上演して人気を博した内容に、新場面を加えた博多座バージョンで、劇場が一体となって楽しめる演出となっている。作・演出は中村暁。

真風涼帆(まかぜ・すずほ)
 熊本県菊池郡出身。2006年に初舞台後、星組に配属。09年の新人公演で早くも主演をつとめ、その後もダイナミックな舞台姿と実力で注目を集める。15年、宙組に組替え。18年1月の『WEST SIDE STORY』から、宙組トップスターとして活躍。同年の宝塚大劇場お披露目公演『そらは赤い河のほとり』では、少女漫画の世界を華やかに表現した。
星風まどか(ほしかぜ・まどか)
 東京都国分寺市出身。2014年の初舞台後、宙組に配属。15年の『王家に捧ぐ歌』新人公演でアイーダ役に抜擢され、歌に芝居に確かな実力をみせる。16年の『ヴァンパイア・サクセション』で真風涼帆の相手役をつとめるなど、数々のヒロイン役を経験。18年の『WEST SIDE STORY』で宙組トップ娘役のお披露目を果たし、可憐かれんで芯の強いマリア役を熱演した。

 公演は2月25日(月)まで。観劇料(税込み)はA席8,800円、特B席7,800円、B席 6,200円、C席4,000円。公演日程やチケット購入などの詳細は、博多座のホームページ(https://www.hakataza.co.jp/)をご覧ください。チケットは残りわずか。ご希望の方はお早めにお求めください。

 公演に関するお問い合わせは、博多座電話予約センター(092-263-5555、10時~18時)へ。

<舞台写真はいずれも博多座提供>

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