[ぷちレビュー]大泉洋さん主演映画『そらのレストラン』 笑いあり、涙あり、おいしいものあり! 冬の真っただ中、心の底から温まります 1月25日(金)全国ロードショー

 映画『そらのレストラン』が1月25日(金)から、福岡市のユナイテッド・シネマキャナルシティ13などで全国公開されます。大泉洋さん主演の北海道シリーズ最新作。若き酪農家のチーズづくりをめぐる人間模様を中心に、家族の絆や仲間の友情、食の可能性を丹念に描くハートウォームな物語です。笑いあり、涙あり、おいしいものあり。冬の真っただ中、劇場で心の底から温まってください。

 新鮮な発想と優しい目線で「地域と人と食」に光を当て、多くのファンを獲得してきた北海道シリーズ。第1作『しあわせのパン』(2012年)は洞爺湖畔で「パン」を分かち合う「夫婦」を、第2作『ぶどうのなみだ』(2014年)は道央・空地地方で「ワイン」の熟成に取り組む「家族」を描きました。待望の第3作『そらのレストラン』は、道南・せたな町の自然派農民グループをモデルに、「チーズ」づくりに挑む若き酪農家と、自然に寄り添った食を追求する「仲間」たちの絆を紡ぎます。

 ストーリーは――

 北海道・せたな町。海の見える牧場で、酪農とチーズ工房を営む設楽亘理わたるは、妻と幼い一人娘と幸せに暮らしている。夢は、師匠のような唯一無二のチーズをつくること。その背中はまだまだ遠いが、自然と共生して安心・安全な食を追求するライフスタイルを共有する仲間にも恵まれ、充実した日々を送っていた。ある日、札幌のカリスマシェフが亘理たちの食材を激賞し、それらを材料に極上のフランス料理をつくってみせる。食材のポテンシャルに気づいた亘理はおいしさを多くの人に届けようと、(一季節に)一日だけオープンするレストラン企画を発案し、仲間の賛同を得る。だが、チーズに関しては相変わらず納得のいく味を出せない。悩んでいた矢先、レストラン企画でも頼りにしていた師匠が突然倒れて……。


 主役の酪農家・亘理役は、今や日本映画界を代表する名優に数えられる北海道出身の大泉洋さん。今作も、持ち前の飄々ひょうひょうとしたたたずまいやユーモラスさで存在感を放ちました。妻と娘を大事にする亘理は、心優しく朗らか。ただ、生来の「弱さ」を抱えています。チーズづくりに関しては自己評価が極めて低く、無意識にモラトリアムを求めている節があります。師匠のチーズ職人に、牧場主だった亡き父を重ねており、<越えたいけど越えたくない>という複雑な心情が見て取れます。こうした内面描写にも秀でる大泉さんは、チーズづくりにかける情熱と苦悩、家族や仲間への愛情と孤独、大切な人を亡くした喪失感などを、実に細やかに表現しました。すごみを感じたのは、亡き師匠のチーズ工房の前に立ったシーン。使える道具があれば使ってほしい、と師匠の妻から中に入るよう促されたときの演技……胸が震えました。

 亘理の妻・こと絵役は本上まなみさん。変わらぬ透明感が印象的であり、作品の清涼感を体現しています。愛する夫と娘を母性豊かに見守るのですが、近すぎない距離感が絶妙。支え合いながらも、雄大な自然の中でそれぞれが自立して生きる。そんな家族のあり方を感じさせました。見応えがあったのは、チーズづくりから逃げ出しそうになる夫を、正面から声もなく抱きしめる場面。女神のように美しく強く、夫を慰撫いぶし鼓舞する心の声が聞こえてくるようでした。こと絵は主な登場人物の中で唯一、来し方の説明がない役柄。それゆえのミステリアスさを、主婦役ながら担保し続けたのもさすがでした。“女神”だから説明なしなのかなぁ、なんて深読みしちゃいました。

 亘理と陽気な仲間たちの軽妙なやりとりは耳に心地よく、作品のリズムも生み出しています。時にぶつかり合いながら、友情を深めていく様子は少年たちのようにも映り、ピュアな感動を覚えます。

 岡田将生さんは、東京のエリートサラリーマン生活で生きる意味を見失い、北海道にやってきた若者、神戸陽太郎役を好演。当初、牧羊の仕事にアタフタする様子は独特のおかしみがあり、若手実力派の面目躍如でした。徐々に本来の姿を取り戻していく成長物語に、エールを送りたくなりました。

 仲間内の兄貴的存在、米・大豆農家の石村甲介役は、マルチな才能を発揮するマキタスポーツさん。喜怒哀楽に人生経験がにじみ、表情だけで語る演技に味わいがありました。最終盤、自分の人生を照らしてくれた妻への愛と感謝を語る部分はエモーショナル。涙腺ご注意です。

 亘理の同級生、トマト・野菜農家の富永芳樹は実直・武骨であり、どこか危なっかしい。高橋努さんはそんな“起爆剤”的なキャラクターを、男の愛嬌あいきょうたっぷりに、はかなさも添えて熱演しました。日ごろの作業服姿から一変、ビシっと決まったギャルソン姿は、ギャップえでした。

 仲間内で唯一、海に出ている漁師の野添隆史役は、シンガー・ソングライターの石崎ひゅーいさん。UFO好きで、ところ構わず“召還ダンス”を始めては、仲間を引き入れる不思議キャラを、独特の空気感で際立たせました。一度だけ怒り、拳を振り上げたのはサプライズであり、ストーリー上も効果的でした。

 男たちに新たな可能性を示すのは、札幌のカリスマシェフ・朝田一行。そのエレガントさと、愛すべき“変人”感を、眞島秀和さんが巧みに両立させました。その手になる食材の素晴らしさを生かした料理や、芳醇ほうじゅんなワインの数々は、眞島さんの口上とともに物語を美しく彩りました。

 亘理の師匠のチーズ職人・大谷雄二と、妻・佐弥子の存在は、作品に奥行きと重みを与えました。

 大谷役の小日向文世さんはセリフが絞られている中、微妙なニュアンスや行間の表情で、亘理への愛情や胸中を表現しました。亘理に「もうここ(大谷のチーズ工房)に来るな」と言い渡したとき、口にしなくてもその思いは伝わってきました。ベテラン俳優の風格が漂いました。

 佐弥子役は風吹ジュンさん。変わらず愛らしい笑みをたたえ、頑固な夫や、殻を破れない亘理らを優しく見守ります。握り続けてきた絵筆で今、キャンバスに描くのは夫の肖像。すべてを悟ったうえで、運命と向かい合います。その静かさは、生の向こう側を見つめているようでした。

 この大谷夫妻はいつも別々の場所にいます。夫はチーズ工房に、片方の足が不自由な妻はアトリエに。会話も多くない。でも、絆は固い。だからこそ、いい距離感を保てます。理想の夫婦とも言え、亘理の妻こと絵はおそらくお手本にしています。佐弥子はそのときが来ても粛々と受け入れるだろう。そう思っていました。ところが……風吹さんの感情表現には驚かされ、うなるしかありませんでした。

 監督は、抜群の映像センスと繊細な人物描写に定評のある俊英・深川栄洋さん。今作では、人にとって大切なものは何か、幸せとは何か、暮らしとは何か、という古くて新しい問いに対する答えを、厳しくも優しい北の大地に生きる人々を通して鮮やかに描いてみせました。丘の上の「そらのレストラン」に着席したら、「人生の輝き」という名の料理が運ばれてくるはずです。

 主題歌はインディーズ出身の注目バンド「スカート」が、挿入歌は数多くの劇伴を手がけてきたシンガー・ソングライター世武裕子さんが担当しています。

 「パン」「ワイン」に続き、「チーズ」をテーマに取り上げた<熟成・発酵>シリーズ第3作は、濃厚でいて爽やかな、忘れられない味わいでした。ごちそうさまでした!

 全国の上映館などの詳細は、公式サイト(https://sorares-movie.jp/)をご覧ください。

『そらのレストラン』

公開
2019年1月25日(金)
出演
大泉洋、本上まなみ、岡田将生、マキタスポーツ、高橋努、石崎ひゅーい、眞島秀和、安藤玉恵、庄野凛、鈴井貴之(友情出演)、風吹ジュン、小日向文世
監督・脚本
深川栄洋
脚本
土城温美
音楽
平井真美子
製作
『そらのレストラン』製作委員会
企画
クリエイティブオフィスキュー
製作プロダクション
アットムービー
配給
東京テアトル
主題歌
「君がいるなら」スカート(PONY CANYON)
挿入歌
「Bradford」世武裕子(PONY CANYON)/「花束にかえて」スカート(PONY CANYON)

公式サイト sorares-movie.jp
公式Twitter sorares_movie
公式facebook sorares.movie

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