[ぷちレビュー]博多座10月公演『魔界転生』を観劇 上川隆也&溝端淳平&高岡早紀―― 豪華キャストと最新機構・技術で贈る「スペクタクル時代劇」 笑いも涙もある感動大作!! 10月28日(日)まで上演中

 日本テレビ開局65年記念舞台『魔界転生まかいてんしょう』が、全国に先駆けて福岡市・博多座で上演中です。ド派手なアクションに加え、回り舞台やフライングといった最新の演出・機構、プロジェクションマッピングなどの最先端技術を駆使したスペクタクル時代劇。江戸初期の「島原の乱」をモチーフにした幻想的な世界で、上川隆也さんをはじめ、溝端淳平さん、高岡早紀さんら名実を兼ね備える豪華キャストが躍動し、魅せます。一方で、ギャグやコメディーが所々に盛り込まれ、世界観とのギャップも楽しめます。舞台の面白さが凝縮された感動大作。わたくし、笑って、泣いて、心揺さぶられました。

 『魔界転生』は山田風太郎の人気伝奇小説で、1967年(昭和42年)に『おぼろ忍法帖』として単行本化されました。史実を織り込んだ夢幻の歴史ロマンを、時空を超えた壮大なスケールで、奇抜かつ摩訶まか不思議な展開で描いており、81年の映画化以降、舞台、漫画・アニメ、ゲームなど様々なジャンルでリメイクされています。

 福岡・博多座の後、東京・明治座、大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される今作は、ドラマ『SPECシリーズ』、映画『20世紀少年』など多くの名作を手がけた巨匠・堤幸彦さんが演出を手掛け、演劇界の重鎮・マキノノゾミさんが脚本を担当。カルトとアクションを融合した、退廃と混沌が渦巻く豪華絢爛けんらんなエンターテインメントを創出しました。このコンビは2014年に大ヒットした舞台『真田十勇士』も生み出しており、強力タッグの再結成となりました。

 では、まずはあらすじを――。

 寛永15年(1638年)、徳川幕府のキリシタン弾圧で、肥前国(長崎県)南島原の原城に立てこもった人々が惨殺されるという悲劇が起きた。その数およそ3万7000人。この「島原の乱」総大将・天草四郎(溝端淳平)は怒りと憎しみに燃え、妖術「魔界転生」によってこの世によみがえり、復讐ふくしゅうを誓う。宮本武蔵、荒木又右衛門ら歴史に名を残す剣豪や猛者たちを、黄泉よみの国から悪鬼として転生させては配下に加え、幕府滅亡を画策する。これら魔界衆に立ち向かうのは、隻眼の剣豪・柳生十兵衛(上川隆也)が率いる柳生衆を中心とする幕府方。血で血を洗う死闘が続き、ついに最終決戦を迎える――。

 柳生十兵衛役の上川隆也さんは、男気のある魅力的な剣豪を生き生きと演じました。腹の底から響かせるような声量、殺陣をはじめとする切れのある動き、ときおりかます(笑)ギャグの呼吸の良さ……。その実力により、生身で魔物に立ち向かう十兵衛という人物像を硬軟両面から浮かび上がらせ、観客を引き込みました。最大の見せ場は、十兵衛への嫉妬から悪鬼と化した父・柳生宗矩(松平健)との対決シーン。胸をかきむしるような心情を抑えながらもほとばしりそうになる、そのギリギリの表現に胸が熱くなりました。

 天草四郎役の溝端淳平さんは、苦悩する純粋な少年として登場。転生後は妖艶ようえんな狂気の魔物として跋扈ばっこするも、姉・お品(高岡早紀)を思いやるなど「心」は残っています。これらの演じ分けが見事でした。出番の多くは変幻自在のフライングで宙を舞い、舞台前方に出てくる機会も限られているにもかかわらず、さすがの存在感でした。甘いマスクにエキゾチックな衣装が映えていたのも印象的。迫力のある声で呪文「エロ・イム・エッサイム……」を唱えると、照明や音響技術と相まって、劇場の空気が瞬時に変わりました。

 ちなみに、上川隆也さんと溝端淳平さんはいずれも博多座初登場です。

 美しく芯の強いお品は、高岡早紀さんのはまり役と言いたい。言わせてください。まず、背筋がスッと伸びた着物姿だけで目を引きます。力量を感じたのは、たたずまいで“語る”演技。弟・天草四郎亡き後、うつつを生きながらも死の世界を見つめているような悲しい透明感は、胸に迫りました。秀逸だったのは、転生した淀殿(浅野ゆう子)に相対し、そのあと覚悟の行動を起こす一連の流れ。絞り出すようなセリフと繊細な所作が胸アツでした。その一方で、「笑い」もこなしちゃうんだから、すごいなぁ。

 十兵衛と行動をともにする真田十勇士の生き残り・根津甚八役の村井良大さんは、十兵衛とお品、お品と淀殿を結びつけるキー役を滑舌よく軽快にこなし、物語に疾走感を与えました。登場シーンの女形で観客を「つかみ」ました、ね。天草四郎を魔界に導く軍学者・由比正雪役の山口馬木也さんは、悪党ながらどこか間抜けで憎めないという、一筋縄ではいかないパーソナリティーを、ときにシリアスにときにコミカルに表現。ギャグも含め、懐の深さを見せました。宮本武蔵役の藤本隆宏さんは、めぐまれた体格を生かした殺陣にすごみがありました。蘇ってからも好待遇の仕官を望むといういじましい設定を、おかしみを漂わせながら好演しました。福岡県出身。元水泳オリンピック選手です。

 天草四郎に呼び覚まされた淀殿役の浅野ゆう子さんは、悪鬼ながら子を慈しむ母性を体現。亡き愛息・豊臣秀頼を思い、懐かしの歌を口ずさみながら手まりで遊ぶ“一人芝居”は、耐えられないほどの切なさでした。十兵衛の父で幕府惣目付の柳生宗矩役は松平健さん。自己に起因する息子との相克に苦しみ、ダークサイドに落ちていく前半は重厚な演技で魅せ、後半はご存じのすばらしい殺陣を披露してくれました。まさに千両役者の風格でした。

 十兵衛配下の柳生衆や、天草四郎配下の魔界衆のキャストも情感豊かに、エネルギッシュに舞台を支えました。

 演出面では、コンピューターグラフィックス(CG)の映像を投影する「プロジェクションマッピング」の本格導入が新鮮でした。島原、江戸、大坂(大阪)、柳生の里(奈良)と場面が変わる際は、古地図を映し出して場所を表示。島原の乱をはじめ、戦闘シーンも主に俯瞰ふかんの構図で“上映”され、投影スクリーンが巻き上げられると、引き続き役者が実際の戦闘アクションを繰り広げました。

 ――生と死、善と悪、秩序と破壊、過去と未来……。人類共通の様々なテーマを内包した約4時間の舞台は、贅沢ぜいたくな余韻を残して幕を閉じました。当然のように会場はスタンディングオベーションの嵐。カーテンコールでは、上川隆也さんが「最終公演の地、大阪まで進化を続けてまいりたい。ご声援のほどよろしくお願いいたします」とあいさつしました。

 博多座前では、出演者の名前を染め抜いた大きなのぼりが林立して秋風にはためき、これぞ芸どころ・博多!の雰囲気。エントランスには、『魔界転生』をテーマに、草月流の片山健氏が製作した独創的な装花が展示され、公演ムードを盛り上げています。

 博多座公演は10月28日(日)まで。東京・明治座公演は11月3日(土祝)~27日(火)、大阪・梅田芸術劇場メインホール公演は12月9日(日)~14日(金)の予定です。

『魔界転生』博多座公演

期間
2018年10月6日(土)~28日(日)
原作
山田風太郎(角川文庫刊)
脚本
マキノノゾミ
演出
堤幸彦
出演者
上川隆也(柳生十兵衛)、溝端淳平(天草四郎)、高岡早紀(お品)、村井良大(根津甚八)、松田凌(北条主税)、玉城裕規(田宮坊太郎)、木村達成(柳生又十郎)、猪塚健太(荒木又右衛門)、栗山航(小栗丈馬)、丸山敦史(戸田五太夫)、山口馬木也(由比正雪)、藤本隆宏(宮本武蔵)、浅野ゆう子(淀殿)、松平健(柳生宗矩)、野添義弘(宝蔵院胤舜)、皆本麻帆(すず)、蒼木陣(小十郎)、町井祥真(宗一郎)、野村祐希(磯谷千八)、横山一敏(内藤主膳)、真砂京之介(岩浅重成)
主催
博多座、FBS福岡放送、KKTくまもと県民テレビ、NIB長崎国際テレビ
企画・製作
日本テレビ
観劇料(税込)
A席 14,000円 B席 10,000円 C席 6,500円。

 チケットのご購入・お問い合わせは、博多座電話予約センター(電話092-263-5555、10時~18時)へ。

 詳細は博多座ホームページ(https://www.hakataza.co.jp/ticket/)をご覧ください。

<写真はいずれも博多座提供>

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