[ぷちレビュー]博多座でミュージカル『マリー・アントワネット』を観劇 新演出版の日本初演! 豪華・ドラマチック・珠玉の音楽 9月30日(日)まで

 ミュージカル『マリー・アントワネット』が福岡市・博多座で好評上演中です。ミュージカル界の巨匠コンビ、ミヒャエル・クンツェさん(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイさん(音楽、編曲)による最高傑作との呼び声も高い歴史ロマン大作。2006年に東京・帝国劇場で世界初演が行われ、07年の福岡・博多座を経て世界各国で上演され、今回、装いも新たに「新演出版」として日本に再上陸、しかも博多座で初演を迎えました。その舞台を観てきました! 豪華でドラマチックな世界に浸り、それぞれの人生を懸命に生きる人々の姿に勇気をもらいました。ふと気づくと、未知なるパワーが全身に充満してて……。この感じって、ミュージカルならでは、なんですよねっ。

写真提供:東宝演劇部

 『マリー・アントワネット』は、遠藤周作の「王妃マリー・アントワネット」を原作としています。『エリザベート』『モーツァルト!』など数々の傑作ミュージカルを生み出したクンツェさんとリーヴァイさんは、「彼(遠藤周作)が書いた小説が、王妃と下層階級の若い女性を対比させるというアイデアを与えてくれました」としています。若い女性というのは劇中唯一の架空の人物、マルグリット・アルノー。その人物像について、演出のロバート・ヨハンソンさんは「革命期を生きた数多くの女性をひとりの人物として具現化した存在であり、彼女の目を通して私たちは悲劇の王妃を新たな視点から見ることになります」と解説しています。そう、この物語は、「M.A」という同じイニシャルを持つ二人、14歳の時に政略結婚でオーストリア・ハプスブルク帝国から嫁いだフランス王妃マリー・アントワネットと、貧民の娘マルグリット・アルノーの人生がフランス革命の嵐の中で交錯する中、マリーとスウェーデン貴族の悲恋が美しくロマンチックに描かれます。

 あ、開演のブザーが鳴りました……。

 ……月明かりの下、たたずむスウェーデン貴族・フェルセン伯爵。その手に、1通の知らせが届きました。予想通り、処刑執行の知らせでした。断頭台の露と消えたのは、フランス王妃マリー・アントワネット。37歳。愛した女性の運命は何と過酷だったことか。激動の月日を回想します――。

 18世紀末のフランス。国王ルイ16世(佐藤隆紀/原田優一、Wキャスト)の統治下で、飢えと貧困に苦しむ民衆を尻目に、王妃マリー・アントワネット(花總まり/笹本玲奈、Wキャスト)を筆頭とする特権階級の人々は、豪奢ごうしゃな生活を満喫していました。ある日、パレ・ロワイヤルで豪華な舞踏会が催され、圧倒的な美しさを誇るマリーは、愛人のスウェーデン貴族・フェルセン伯爵(田代万里生/古川雄大、Wキャスト)とつかの間の逢瀬を楽しみます。夢のような舞踏会が繰り広げられる中、突然飛び込んできた貧しい娘・マルグリット・アルノー(ソニン/昆 夏美、Wキャスト)は、民衆の悲惨な暮らしを訴え、救いの手を求めます。しかし、返ってきたのは嘲笑だけ。マルグリットは困窮する民衆に目も向けず、自分たちの贅沢ぜいたくのことしか考えない特権階級の貴族らに憤りを覚え、フランス革命への道を歩み始めます。一方、国王夫妻を失脚させようと企むオルレアン公(吉原光夫)も動き始めて……。

写真提供:東宝演劇部
写真提供:東宝演劇部

 観劇したのは初日で、マリー・アントワネット役は花總まりさん、マルグリット・アルノー役はソニンさん、フェルセン伯爵役は田代万里生さん、ルイ16世役は佐藤隆紀さんでした。

 元宝塚歌劇団雪組・宙組トップ娘役の花總まりさんは、宝塚時代を含めると、マリー・アントワネット役は3度目。絢爛けんらん豪華な衣裳に身を包み、気位の高さと愛らしさが同居するマリーを生き生きと演じました。せりふ、歌、ダンスとすべてが安定していて自然なので、感情移入しやすく、それゆえ、ちょっとした表情の変化や所作に気づき、味わうことができました。王妃、妻、母、一女性と、ストーリーが進むにつれて見せる様々な「顔」も見応えがありました。特に終盤、残酷な運命の荒波の中で、2人の子供を必死に守ろうとする「母」の姿は真に迫っており、ぐっときました。そして、最終盤。とらわれの身となり、姿も変わり果てたとき、むしろ神々しさを発していたのは、さすがでした。そこには、「誇り」というオーラが漂っていました。

写真提供:東宝演劇部

 若手実力派のソニンさんは、マルグリット・アルノー役を生き生きとパワフルに表現しました。喜怒哀楽をむき出しにしゃべり、歌い、踊る姿を追っていると、架空の人物ゆえの難しさよりむしろ、自由さ・新鮮さがほとばしり、ステージ全体の原動力のような存在感を発揮していました。後半、革命派のもくろみを担って王妃マリーに仕えるうちに、その真の姿を知ります。前半とはうって変わった内省的な演技には、深みさえ感じました。そして、2人に関する衝撃の事実を知り、断頭台に向かうマリーに相対した場面。事実は口にせず、初めて頭を下げて敬意を表します。無言で。それだけ。その数秒のシーンはこの作品の見所の一つであり、ソニンさんの才能をあらためて実感しました。

写真提供:東宝演劇部

 田代万里生さんは、テノールの響きがすばらしい。情熱を秘めた包み込むような歌声は、マリーを愛し守ろうとするフェルセン伯爵の包容力や真摯しんしさに説得力を与えていました。その端正なマスクや立ち姿の美しさも目を引きました。ルイ16世は、王に生まれたばかりに思い悩み、時代の波に飲みこまれる、凡庸ながら憎めない男として描かれます。佐藤隆紀さんは、その悲しみやおかしみを文字通り体現しました。その一方、厚みのある歌声からは、王の秘めた「覚悟」も感じました。オルレアン公役の吉原光夫さんのほか、駒田一さん、彩吹真央さん、坂元健児さん、彩乃かなみさんらの好演も光りました。オーケストラによる珠玉の音楽の生演奏も、ステージを感動的に支えました。

 この日は、日本初演を記念して特別カーテンコールが行われ、花總まりさんがあいさつ。「今日はミュージカル『マリー・アントワネット』の、本当の本当の初日にお越し下さりありがとうございます! 不安もありましたが、皆さまの温かい拍手のおかげで無事に、良いスタートを切ることができました」と安堵の笑顔を見せました。ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』(博多座では2018年7月に上演)に続き、フランス革命を題材にした作品への出演となったソニンさんも、「今日までいろんな方々の力があって幕が開いたと思うととても感慨深いです。最後まで役を生き抜きたい」と力を込めました。新演出版を手がけたシルヴェスター・リーヴァイさんやロバート・ヨハンソンさんも姿を見せ、客席はスタンディングオベーションに包まれました。

 博多座前には、開演に30分ほど余裕をもって到着しました。壁面のグランドビジョンには『マリー・アントワネット』のビジュアルが映し出され、階段にはキャストののぼり旗がはためいています。エントランス部分に上がると、主要キャストの大型ビジュアル看板や、出演者の写真一覧が掲出され、出入り口をはさんで内外に人があふれていました。待ち合わせのほか、スマートフォンで写真を撮ったり、今日の見所について会話を楽しんだり……。幕前の時間の使い方は様々ですが、どの顔にも期待感がにじんでいました。エントランスからエスカレーターで劇場フロアへ。と、記念写真コーナーが用意されていました。スマホやデジカメを係員に渡すと、主要キャストの大型ビジュアル看板をバックに撮影してもらえるのです。少しはにかみ気味の方も、破顔一笑の方も、どの顔にもいい表情が浮かんでいました。うれしいファンサービスですね。

 ミュージカル『マリー・アントワネット』は福岡・博多座公演(9月14日~30日)の後、東京・帝国劇場(10月8 日~11 月 25 日)、名古屋・御園座(12 月 10 日~21 日)、大阪・梅田芸術劇場メインホール(2019年1 月 1 日~15 日)で上演が予定されています。

 博多座の『マリー・アントワネット』観劇料(税込)はA席15,500円、特B席12,500円、B席 9,500円、C席 5,000円。

 チケットのご購入・お問い合わせは、博多座電話予約センター(電話092-263-5555、10時~18時)へ。詳細は博多座ホームページ(https://www.hakataza.co.jp/ticket/)をご覧ください。

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