中村獅童さん、尾上松也さんが福岡で会見 博多座で11月3日開幕の新作歌舞伎『あらしのよるに』PR 「脚本は博多バージョン」「後世に残る作品に」「ぜひお子さま連れで」 “秘密”のこだわり・楽屋話も披露

 歌舞伎俳優の中村獅童さんと尾上松也さんが福岡市で記者会見し、博多座で11月3日(土・祝)~27日(火)に上演する『あらしのよるに』について、意気込みや思いなどを語りました。初演の京都・南座(2015年)、東京・歌舞伎座公演(16年)を経て、九州初“上陸”する新作歌舞伎。「これまでで最高の舞台を」と力を込める二人は、自信と気迫をみなぎらせる一方、演技上の“秘密”のこだわりや楽屋話をユーモアたっぷりに披露するなど余裕も。若い世代を中心に、歌舞伎愛好のすそ野を広げるという中長期的な目標にも言及しました。同名のベストセラー絵本を原作とするファンタジックな演目を、今をときめく「獅童&松也」コンビがどう演じ、どう心を揺さぶってくれるのか――。んもう、開幕が待ちきれないっ!

 記者会見は8月31日、福岡市・天神のエルガーラホールで行われました。獅童さん、松也さんともスーツ系ファッションで登場しましたが、獅童さんはブラックのモード系、松也さんはオーセンティックなスリーピースと、ある意味では対照的なスタイルでした。若々しくも売れっ子特有の風格をまとう二人は、一つひとつ言葉を選びながら、丁寧に、熱を込めて話してくれました。それでは、会見の様子をどうぞ。

 と、その前に少しおさらいを(笑)。

写真提供:松竹

 『あらしのよるに』は、本来は敵同士で捕食関係にあるおおかみ山羊やぎの禁じられた友情を描き、主人公の狼「がぶ」役を獅童さん、山羊の「めい」役を松也さんが演じます。歌舞伎舞台化は、絵本にほれ込んだ獅童さんが熱望して実現。京都・南座、東京・歌舞伎座公演とも好評を博し、今回、3か所目として福岡・博多座公演が決定しました。現代の絵本が歌舞伎の演目になったのも、全編にわたって動物役だけが出演するのも、歌舞伎では初めて。そうした独特の世界を、見得みえやだんまり、義太夫など歌舞伎の古典的な手法を駆使して豊かに表現します。子供にも分かりやすいセリフを使い、現代的なセンスの笑いを盛り込むなど、だれもが堪能できる工夫もなされています。脚本は今井豊茂さん、演出・振付は藤間勘十郎さんです。

 では、今度こそどうぞ!

――お二人からごあいさつを。

獅童 がぶ役をつとめさせていただく中村獅童です。歌舞伎の観劇となるとどうしても、お子さまが声を上げると、お母さんが「しーっ」ってやったりするんですけど、この『あらしのよるに』に限ってはもう、笑いたいときに笑っていただいて、拍手をしたいときは拍手をしていただいて構いません。小さなお子さまから読み聞かせをするお母さままで、家族みんなで楽しめるストーリーになっていますので、ぜひお子さま連れで観に来ていただきたい。小さいころにお母さんと映画や演劇を観たことって、僕もそうなんですけど、年齢を重ねてから思い出したりします。(今公演を観劇する)お子さまたちが大人になったときに思い出して、「歌舞伎を観に行ってみようか」という気持ちになっていただけたら、この芝居をつくった甲斐があるなと思っています。

松也 私も初演から出演しておりまして、今回もめい役をつとめさせていただきます。新作をつくっていくというのは非常に苦しいものです。初日が開くまでは、みんなが不安にかられます。ですが、この『あらしのよるに』に関しては、もう開く前から、というか舞台稽古を重ねる段階から、「きっと皆さんに愛していただける作品になる」という確信めいたものがありました。実際、幕が開くとどんどん、口コミで反響が広がりました。三度目の今回は、博多座でひと月、上演させていただけるということでうれしい限りです。これまで二度の経験を生かし、さらにいい作品にしたいと思っています。そして今後、何度も何度も上演されて、後世に残る作品になっていったらいいなと思います。

――獅童さんがこの絵本を歌舞伎にしたいと思った理由は。

獅童 この絵本に出会ったのはまだ若手のころでしたが、読んだ瞬間、<これは歌舞伎になるな>と感じました。やはり絵本や童話というのは普遍的だし、歌舞伎もそうだと思うんですね。400年前にできたストーリーでも、今ご覧になった方たちが笑ったりしてくださるわけです。それは日本ならではの普遍的なテーマを含むからなんじゃないかな、と。歌舞伎舞台版『あらしのよるに』には、僕なりに感じるテーマもあります。「自分を信じろ」「自分の道を突き進む」というセリフがあるんですが、どこか僕の役者人生に重なるところがあったりします。この『あらしのよるに』が中村獅童の一つのライフワークになっていけばいいな、という思いがあります。

 作品は公演ごとに脚本が少しずつ変わっています。原作のきむら(ゆういち)先生からも毎回、リクエストがあります。あそこはこうしてもらいたい、とか(笑)。今回もやはりリクエストがあったので、博多座公演はこれまでとはまた違ったバージョンになると思います。

――松也さんはめい役のオファーをもらったときどんな気持ちだったか。原作に対する思いは。

松也 獅童さんが「一緒にやろう」と言ってくださったんですが、当時、僕は大きな役をやらせていただける機会はまだまだ少ない時期でした。にもかかわらず、こうした新作の、主役の一人という、責任を与えていただけるっていうのが本当にうれしかったです。ですから、何とかこのお芝居を僕の力で少しでもいいものにしていきたい、と強く思いました。原作については、獅童さんが映画でがぶの声をなさっていたので知っていました。めいを演じるときはオス・メスは意識せず、単純にがぶを愛し、友情を育む、という感じにしています。観る人によっては恋人同士、あるいは兄弟、あるいは熱い友情で結ばれた男同士に見えるかもしれない。そういうキャラクターのつくり方ができたらいいな、と思って演じてきました。

写真提供:松竹

――がぶとめいを演じるうえで苦労した点、工夫した点は。

獅童 がぶは狼らしく見えないといけないわけですけど、そのために演技の工夫のほか、裏方さんと呼ばれる方々の工夫があります。例えば、衣裳は狼のいろいろな資料を集めたうえで作られるんですが、歌舞伎ですからあくまで和服なんですね、和服という範囲の中で様々な工夫がなされるわけです。ちなみに、『あらしのよるに』の衣裳は着るとすっごい暑いです(笑)。1公演が終わると、体重が1.5キロくらい落ちたりします。歌舞伎では(役者の)我々が動物を演じるとき、例えば狐なら手の“表情”などの「型」が残っていますから、それをアレンジして狼らしく見せることができます。要所要所で動物らしく見せる基本はこの型にあります。

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写真提供:松竹
 ところで、古典にこだわった新作歌舞伎『あらしのよるに』は、義太夫の方のうたい文句にしても言葉が分かるから笑いが起きます。これは通常の古典歌舞伎ではなかなかないことです。歌舞伎では、登場人物の心情を義太夫の音楽に合わせて語ります。例えば、狼のがぶは山羊のめいと仲良くなったとはいえ、普段は山羊を食べるわけですから、おなかがすくとめいを食べたくなっちゃうわけですね(笑)。そのがぶの心の声を、義太夫さんが「食いてぇーなぁー」ってやるわけです(笑)。そういうところは見所の一つだと思います。長唄の歌詞も分かりやすい。よく聴いていると、結構笑えるところもあるので、そんなところも楽しんでいただきたいですね。

 新作に関しては、いろいろなスタイルがあっていいと考えていますし、僕自身も初音ミクさん(音声合成ソフトCGのキャラクター、仮想アイドル)とデジタル歌舞伎をやることもありますけど、『あらしのよるに』はアナログに、歌舞伎の古くからの表現方法にこだわった作品です。ですから、歌舞伎ならではの型、踊り、立ち回り、義太夫、長唄などの要素が凝縮しています。伝統を守りつつ、革新を追究する、というのが大事なような気がします。子供さんや若い人たちのハートに届くような芝居をつくっていきたいし、それによって歌舞伎に興味を持ってもらえたらうれしいですね。

松也 歌舞伎は、顔などは人間のままでやっているので、獅童さんがおっしゃったように、衣裳などで工夫をしています。めいもそうなんですが、私の個人的な工夫というところで言うと、草を食べるシーンでは、口の動きはリアルに山羊ちゃんを(笑)表現しています。それから、これは一緒に出演している人も気づいていないかもしれないんですが、初演時から僕の中で勝手に「ひづめの型」というのをつくっていて、ずっとやり続けています。

――実際の山羊を見て研究を?

松也 研究というか、めいはがぶと違って、手に何も装着しておらず素手の状態なので、どういう風に「山羊」を表現しようかなと。そこで、微々たるものなんですけど、狐の手の型をもとに、指全体を少し前に出すということをしています。これでひづめっぽくなると思って、僕はずっと、このちょっと出すというのにこだわっています。ところが、公演でずっとやっていると、だんだんと指がつってくるんですよ(笑)。それにも慣れてくるんですけどね(笑)。

写真提供:松竹

獅童 そういう面で言うと、がぶの特徴として、「そうでやんす!」「~やんす!」って言うんですよ。そうすると、(関係者の)みんなの普段の会話もつられて、「そうでやんすね!」って(笑)。殺陣師の人たちはそろって「こっちでやんす!」とかね(笑)。楽屋で結構はやりますね。

――『あらしのよるに』という作品の中に、どのような普遍的なテーマを感じているか。

写真提供:松竹

獅童 やはり、友情とか、信じる力とか……。我々が生きていくうえでも永遠のテーマだと思うし、それは子供たちにとっても大切なものなんじゃないかなって考えますね。

松也 弱肉強食の世界を描く作品なわけですが、見た目とか、表面的なことだけで判断し、決めつけてはいけない、ということも大きなテーマとしてあるんじゃないかと思います。

獅童 「会社社会にも当てはまる」と言ったサラリーマンの方もいらっしゃいましたね。だからやはり、男性だったり女性だったりお子さまだったり……皆さんそれぞれの立場、発想で、無意識のうちにいろんなことに当てはめながら観てくださっているな、と。この絵本がいろんな方々に支持されている理由もこのあたりにあるのかな、と思います。

中村 獅童(なかむら・しどう)
 1981年、二代目中村獅童を名乗り、歌舞伎座で初舞台。歌舞伎の古典では、立役として『義経千本桜 すし屋』のいがみの権太といった大役を務めている。その一方、様々なジャンルで活躍しており、最新のデジタル技術を駆使した「超歌舞伎」では映像の初音ミクと共演し、幅広い層に歌舞伎の魅力をアピールした。フランス・国立シャイヨー劇場で9月19日まで開催のジャポニズム2018「松竹大歌舞伎」に出演中。屋号は萬屋。
尾上 松也(おのえ・まつや)
 1990年、二代目尾上松也を名乗り、歌舞伎座で初舞台。名子役時代を経て、女方として数々の舞台を経験。最近は立役での活躍が目立ち、『義経千本桜 渡海屋・大物浦』の平知盛など古典の大役に挑んでいる。新作歌舞伎『マハーバーラタ戦記』では重要な役を演じた。舞台、映像とも様々なジャンルで活躍。9月15日にIHIステージアラウンド東京で開幕する舞台「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc2」 に出演。屋号は音羽屋。
作品のあらすじ
嵐の夜、狼の「がぶ」(中村獅童)と、山羊の「めい」(尾上松也)はそれぞれ真っ暗闇の小屋で天候の回復を待っていました。狼は山羊が大好物で、「食う」「食われる」の関係ですが、相手の姿が見えないため、二匹は楽しくおしゃべりして仲良くなります。そして、「あらしのよるに」を合言葉に翌日、また会う約束をします。明るい場所で再会したがぶとめいは、互いの姿を知って驚きます。それでも、いじめられっ子だったがぶは、めいが初めて言ってくれた「友達」という言葉がうれしく、二匹は友情を育みます。一方、がぶの狼仲間の「ぎろ」は、かつて片耳を山羊に食いちぎられた恨みから、めいを襲います。かばったがぶはとらわれの身に。めいは救いだそうとしますが、ぎろに見つかります。そこに、山羊の仲間たちが助けに現れます。争いのさなか、山頂まで逃げるがぶとめい。しかし、ぎろたちに追い詰められて――。

 『あらしのよるに』の観劇料(税込)は、A席15,000円、特B席12,000円、B席9,000円、C席 5,000円。※博多座は通常、小学生未満の入場はお断りしていますが、『あらしのよるに』は絵本を原作にした演目であることから、特別に「4歳以上入場可」とします。ひざの上にお子様をのせて観劇するのはご遠慮ください。

チケットのご購入・お問い合わせは、博多座電話予約センター(電話092-263-5555、10時~18時)へ。有名プレイガイドの取り扱いを含む詳細は、博多座ホームページ(https://www.hakataza.co.jp/ticket/)をご覧ください。

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