描いたのは「人を思うこと」 オリジナル映画「君が君で君だ」 主演の池松壮亮さん、監督の松居大悟さんが福岡で会見 愛とは何か、究極のロマンチシズムとは、尾崎豊への憧憬――。T・ジョイ博多などで公開中

 三人の男が尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬になりきって一人の女性を見守ろうとする映画「君が君で君だ」。主演の池松壮亮さんと、監督の松居大悟さんは6月29日、福岡市の上映館、T・ジョイ博多(JR博多シティ9階)で記者会見に臨みました。ともに福岡出身の二人は、作品や役柄、演技などについてフランクに、熱っぽく話しました。作品は7月7日から全国公開中です。

 作品をつくった動機を問われた松居監督は、「恋愛に関して言うと僕は、思いが強ければ強いほど伝えられないことがあると思っていて、だれかを思うことそのものを描いてみたかった」と説明。「例えば、ヒマワリは太陽を見続けて生長するわけですが、決して交わることはない。そういう関係性を描けないかな、というのが着想でした。そうなると、自己犠牲というか、自分自身を捨てて、好きな女性があこがれる人になりきるというようなものが究極だなと考えた」と続けました。「自分にとっては『核』みたいな作品ですし、強いオリジナリティーという意味では自分らしいかなと思います」とも述べました。

 伝説のロックシンガー尾崎豊さんに関しては、「僕は中学・高校生のとき、鬱屈うっくつとしていたんですが、尾崎さんの曲を聞くと何でもできるような、無敵になるような感じになって、背中をバンバンたたかれているように感じました。その存在にずっとあこがれています」と語りました。そのうえで、池松さん演じる男がなりきるけどなれない対象を尾崎さんにした理由として、「男が決してたどり着くことのできない究極の存在にしようと考えたとき、それは自分にとっては尾崎豊さんだったので」と話しました。

 ハリウッドの名俳優ブラッド・ピットと、日本の歴史を大きく変えた坂本龍馬を選んだ理由については、「同じ時代の同じ場所に絶対にいない三人にしようと。海外の人を入れたいなと思ったときに、ブラピはどんな作品に出ても『ブラピがはみ出てる』感が好きだし、名前の響きもよかった。龍馬は僕がすごく好きなので(笑)」と愉快に答えました。

 池松さんを主役に据えた理由を聞かれると、「人間としての一番柔らかい部分で共有しているものがあるから」と回答。「付き合いが結構長くて、ドラマだったり、ミュージックビデオだったりと一緒に仕事をしてきました。僕が演出した『愛』がテーマの舞台で主演をやってもらったこともある」と信頼感を口にしました。演技については、「僕は『尾崎豊になれなさ』を撮りたかった。なれなければなれないほど、好きな女性との距離を表現できるような気がして。池松さんはその距離感がよかった。なれなさが」と高く評価しました。

 一方の池松さん。尾崎さんの曲は父親の影響で幼いころから聞いているといい、「物心ついて初めて歌詞を見ずに歌えるようになったのは、たまたまですけど(作中で歌った)『僕が僕であるために』」と語りました。「あの方が残した表現がいつの間にか自分の体に染みついていて、生きる指針みたいなもの、人としてあるべき姿みたいなものを学んだような気がしています。特別な思いがありますね」

 松居監督に関しては、「一緒にいろんな作品に挑戦してきたから分かるんですが、人を思うこととか、愛することとか、根底にあるものが(自分と)通じています。僕も映画という『表現』をやる以上、そこは切っても切れないものであり、何より見つめていかなければならないものと考えています」と強調。さらに、今作が松居監督のオリジナルであることに触れ、「今、日本でオリジナル作品をやるっていうのはものすごく難しいことなんです。やはりお金も集まらないですし、そもそも興行としてなかなか跳ねない。いわば“オリジナルは悪”とされる中で、松居さんは内側、内側を向いて、深いところでだれかと握手をしようとしている。その姿に賛同したいなっていう気持ちがあります」と力を込めました。

 自身の役柄については、「言ってみれば、尾崎豊さんのお名前を借りているだけなので、(尾崎さんとは)距離がありました。それでも『尾崎豊』から離れすぎず、松居監督が表現しようとしている『核』を大切にしようと。その二つを常に軸に持っていました。あとは、生の感情を抑えていけば何とかなるかな、と考えていました」と俳優ならではの感性をうかがわせました。そして、「お名前や歌をお借りするわけですから、尾崎さんが天国からご覧になったときに、笑いながら応援してくださるような作品にしなければとの思いもありました」と口元を引き締めました。

 三人の男の「愛」の在り方に絡んでは次にように述べました。

 「人を思うことにはいろんな形があって、愛することの『答え』もおそらく出ていない。尾崎豊さんは『僕が僕であるために』の中で<こんなに君を好きだけど 明日さえ教えてやれない>と歌っていますが、もうほんとにその通りで……。人は好きとか愛するとか、永遠とかいうことを平気で口にするけれども、この映画の三人を見たときに、果たしてそこまで自分の人生をかけて、自分の在り方そのもので愛することができるかというと、ほとんどの人ができないんじゃないかと思うんですね。僕もできない側ですし。だからこそ、この作品に引かれるものがあるんじゃないかと思います」

 これには、松居監督が次のように言葉を継ぎました。あえて毒気を含ませるように。

 「『優しさ』に関していうと僕は、人にばれたら優しさじゃないって思うんですよね。それは優しさの押しつけだと。好きっていうのも、伝えた時点でもう、エゴみたいな気がするんですね。自分が好きだからそれを伝えているだけで、<相手のことをほんとに思うなら、おまえのそんな気持ちなんか押し殺しておけよ>みたいな(笑)。僕はそう思ってしまう癖があるんです(笑)」

 最後に、作品に関して質問を受けた池松さんは、松居監督への思いを含めて語りました。

 「あまたある恋愛映画というのは、恋愛の結果がロマンチックなものとして描かれるわけですが、この映画の三人の男はヒロインに会おうともしない人たちなんです。今回、松居監督が最も表現したかったことは、会わない時間こそがロマンチックだということ。つまり、人を思っている時間、例えば、だれかのことを考えながら歩いている帰り道とか、そういうのがロマンチックだと。こういう部分に松居監督の面白さがあるし、自分にとっても発見でした。実は、あの三人にとって10年間で一番かけがえのないものは、見つめるだけだったけれども好きな人を共有したことであり、それこそがロマンチックなものだった――。このことは脚本に書かれていたし、現場で松居監督が表現しようとしていました。すごく狂っているし、力技のような映画ですけど、その分、純度が高いというか、純粋なる狂気というか、そういう強度は出たかな、と個人的には思っています」

作品のあらすじ
三人の男はそれぞれ本名を捨て、尾崎豊(池松壮亮)、ブラッド・ピット(満島真之介)、坂本龍馬(大倉孝二)になりきって、ぼろアパートの一室に身を潜めて共同生活していました。目的は、共通して好きになった、向かいのアパートで暮らす韓国人女性ソン(キム・コッピ)を見守ること。しかし、その手法は数々の「問題行動」を伴っていました。10年目を迎えたある日、ソンに迫る借金取りの女ボス星野(YOU)と子分の友枝(向井理)に見つかり、乗り込まれます。歯車が狂い、事態が動き出します――。
池松いけまつ 壮亮そうすけ
1990年生まれ。福岡県出身。2003年、トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』でデビュー。14年に『紙の月』『愛の渦』『海を感じる時』『ぼくたちの家族』と注目作品に次々と出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞とブルーリボン賞助演男優賞を受賞。17年には『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』に出演、第9回TAMA映画賞最優秀男優賞と第39回ヨコハマ映画祭主演男優賞を受けた。『万引き家族』(18年)など出演作多数。
松居まつい 大悟だいご
1985年生まれ。福岡県出身。劇団ゴジケン主宰。2012年に『アフロ田中』で長編映画初監督。その後、『ワンダフルワールドエンド』(ベルリン国際映画祭出品)、『アズミ・ハルコは行方不明』(東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭出品)などを発表。枠にとらわれない作風が国内外で高く評価されている。ミュージックビデオやドラマ制作など活動は多岐にわたり、J-WAVE「JUMP OVER」(毎週日曜日午後11時~)ではパーソナリティーを務めている。

 全国の上映館については、「君が君で君だ」オフィシャルサイト(https://kimikimikimi.jp/)をご覧ください。

©2018「君が君で君だ」製作委員会
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