カンヌ国際映画祭最高賞「万引き家族」 監督の是枝裕和さん、主演のリリー・フランキーさん(北九州市出身)が福岡で記者会見 「家族」を超えた絆を描いた衝撃と感動の物語 6月8日から全国公開中

 第71回カンヌ国際映画祭で、日本映画として21年ぶりに最高賞パルムドールを受賞した「万引き家族」の是枝裕和監督と、主演のリリー・フランキーさん(北九州市出身)が6月4日、福岡市で記者会見を開き、作品や多くの人に鑑賞してもらう期待を語りました。作品はギャガの配給で6月8日(金)から全国公開中です。

 「万引き家族」は、生きるために、「家族」の形を保つために、万引きなどの犯罪やうそを重ねる一家を描きます。その姿、運命を通して、<人の絆とは何か><家族とは何か>と問いかけます。受賞を記念して6月2、3日、全国約320の映画館で先行上映され、大きな反響を呼びました。そのストーリーは――

©2018『万引き家族』製作委員会
©2018『万引き家族』製作委員会

 冬。東京の下町。再開発が進む中、ポツンと取り残された古びた一軒家に暮らす日雇い労働者の父、治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、きょうも“親子”ならではの連携プレーで万引きに精を出しました。その帰り道、団地の廊下に、寒さに震える幼い女の子がいました。治は思わず、家に連れて帰ります。妻の信代(安藤サクラ)は腹を立てますが、体中傷だらけの女の子、ゆり(佐々木みゆ)の境遇を察し、面倒をみることにします。祖母の初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らす一家は、JK(女子高生)見学店でアルバイトをしている信代の妹、亜紀(松岡茉優)も含め、貧しいながらも幸せに暮らしていましたが……。

 記者会見はグランドハイアット福岡(福岡市博多区住吉)で行われました。冒頭、是枝監督がパルムドールの盾を披露。リリーさんも「世界に71個しかないものですよねぇ」と感慨深げでした。

是枝裕和監督
是枝裕和監督

 家族を描き続ける名匠、是枝監督は原案・脚本・編集も担当しました。作品の着想に関しては、「(第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した)『そして父になる』は、<家族をつなぐのは血なのか、ともに過ごした時間なのか>という二者択一を(主演の)福山雅治さん演じる男に背負わせた映画だったわけですが、その直後に、血を超えてつながる人たちの、家族の話をストレートに描いてみたいと思いました。生んでいないけど母親になろうとする、父親になろうとする、血を超えた共同体としての家族をつくろうとする人たちの話を」と説明。「ただ、優しさだけでつながっているのではない方がいいと考えていたところに、(親の死亡を隠し、年金を不正受給していた)年金詐欺事件があって……それに触れたときに、見ず知らずのおばあちゃんの年金を頼りに人が集まっていて、金目当てなんだけど、結果的に家族に見える――というような発想でいってみようと思いました。そのときにはもう、(キャストとして)リリー・フランキーさんと樹木希林さんの顔が浮かんでいました。そこがスタートです」と話しました。

 6人の「家族」は雑然とした家で、気楽な日々を送っているように見えます。ただ、陰も見え隠れします。何か秘密がある。何だろう。一人ひとりの姿を追ううちに、それぞれの「質量」を感じているのに気づきます。いわゆる「存在感」が迫ってきます。ストーリー展開も洗練されており、無駄がない。ある事件をきっかけに、目の前の霧が晴れていくように、6人の生い立ちや秘密が明らかになる終盤は、ある種の爽快感さえ感じるほどです。撮影、照明、音楽などの効果も含め、そのレベルの高さには舌を巻くしかありません。個人的に最も印象に残ったのは、JK見学店でバイトする亜紀役の松岡茉優さんが、お客役の池松壮亮さん(福岡県出身)と初めて顔を合わせたシーン。心の叫びを抱える者同士が共鳴し合う演技のすごみに、息をのみました。

リリー・フランキーさん
リリー・フランキーさん

 作品に関し、リリーさんは「台本になる前のプロットを読んだ段階で心が震えました。本当にすばらしくて」と振り返り、「是枝さんらしいというか、是枝さんが一番関心を持っているもの、是枝さんしかあまり見ようとしていないもの」が描かれている、と語りました。作中の家族については、「貧しいけれど、身の丈でちゃんと生きている。清潔感がある。血のつながりを超えた温かいものを感じました」。

 演じた父親は教養も甲斐性もなく、息子に盗みを仕込む一方、情が深く憎めない。監督からは「ただのでくの坊。最後までまったく成長しない」と説明を受けたといい、「どう演じるか、いろいろ考えましたが、(自分の素の)ままでいいなと(結論づけた)」と言って笑いを誘いました。是枝監督は「成長しない父親を超えて、息子は成長していく。父親も、超えられることでようやく父親になっていく」と解説しました。

©2018『万引き家族』製作委員会
©2018『万引き家族』製作委員会

 最終盤には、すべてが明らかになった後、父親と息子が久しぶりに会い、一つの布団に背中合わせで横になっているシーンがあります。父親は過去の行動の真意を問われ、覚悟を決めてつぶやくように答えます。この場面について、リリーさんは「布団の中で振り向けなかったですね……ああいうことを聞かれて……」と父親役に戻ったかのような表情を見せました。

 息子役の城桧吏さんの演技には、二人とも感心しきり。是枝監督は「演技に関する説明はほとんどしていない。でも、あの子はそれをつかまえてくる」と独特の表現で評価しました。リリーさんも「なんかもう、分かっているんでしょうね。周りの人たちの芝居を見て、自分はどう受けるべきか、というようなことを」と分析。是枝監督が「完全にセッションに参加してきている感じ」と継げば、リリーさんも「あの年齢で、あの感覚で『受け』の芝居ができるってすごい」と強調しました。

 妻役の安藤サクラさんの演技も際立っていました。特に、まなざしが印象的な女の子役の佐々木みゆさんとの絡みでは、抑制した表情や動きの中で揺れ動く心情をリリカルに表し、見る者の胸をえぐります。是枝監督も、風呂場で腕の傷痕を女の子になでられ、触れ合うシーンを挙げ、「いい芝居だった」と言及しました。「あそこ(の場面)で、(妻は)母親になる決意をしたんじゃないか。自分の過去を抱きしめている感じもする」と“解釈”しました。

 目を引く場面はほかにもあります。例えば、祖母役を味わい深く演じた樹木希林さんや、城桧吏さんが重要なセリフをあえて声に出さず、口の動きだけで表現するシーンです。是枝監督は「花火の音だけが聞こえる、マジックミラーで相手が見えない、でもそこにちゃんとある、いる、という演出は随所にやっています」としたうえで、「何かを言っている。それが何なのか、(声に出さなくても)いいんじゃないですかね」と“かわし”ました。ここで、リリーさんが「『万引き家族』(に最終的に決まる)以前のタイトルは『声に出して呼んで』だった」と明かし、無音のセリフについて「是枝さんは最初から声に出そうとしていなかったんでしょうね」と述べました。すると、是枝監督が「声に出していないことがあちこちにちりばめられている構成ではあります」と演出の一端を語りました。

 ある人物の表情をとらえるラストシーンに関しては、「見る人によって、いろんな解釈があるようです。台本を読んだ僕らからすると、一つの正解はあるんですけど」とリリーさん。是枝監督は「(比喩的な意味で)外に開かれて終わる感じがする。それを最後につかんでいただければと思います」と話しました。

 最後に、「福岡の皆さんに」とメッセージを求められたリリーさんは、パルムドール受賞により、福岡でも上映館数が増えたことに触れ、「たくさんの人に見てもらえる機会をつくっていただけるのはすごくうれしいこと」と感謝。「先行上映を見た人たちからは、『今は自分の中で(作品を)そしゃくできていないから、もう一回見て、考えたい』というような言葉を聞くことが多い」と紹介し、「映画を見終わったあと、1分間でも2分間でもいいから、自分の家族のことを考えたりしてもらえれば、(作り手側にとっては)ごほうびだし、本当にうれしい」と締めくくりました。

 全国の上映館などについては、ギャガの「万引き家族」公式サイト(http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/)をご覧ください。

広告

コメントをどうぞ