(株)ロボットの加藤雅章氏が福岡市で講演 動画配信サービス「新しい市場」、AR「自治体も導入しやすい」、8K「成長早い」

 映画やドラマ、テレビCM制作などで知られる株式会社ロボット(東京)のエグゼクティブプロデューサー加藤雅章氏が5月25日、福岡市内で講演し、自社の事業展開を中心に、業界の最新情報、技術、今後の見通しについて話しました。

 株式会社ロボットは1986年創立で、テレビCM制作で実績を上げ、映画製作に進出。「ALWAYS 三丁目の夕日」(製作委員会)で 2006年の日本アカデミー賞12部門の最優秀賞を受賞するなど、コンテンツ業界のフロントランナーとして知られています。16年以降は、注目を集めるAR(拡張現実)、VR(仮想現実)技術を使った事業に参入。企業のマーケティング支援や、自治体のふるさと創生支援などにも取り組んでいます。

加藤雅章氏
加藤雅章氏

 「新しい技術が出来上がるたびに、それを駆使した新しい事業に挑戦しています」。加藤氏は冒頭、社の方針をこう表現しました。

 「我々の新たな市場」と位置づけたのは、いわゆる配信系コンテンツ。具体的には、動画配信サービスでオリジナルドラマなどの提供が一般的になっていることに触れ、「世界同時配信も珍しくない。テレビに比べて表現できる幅が広いのも魅力。アウトプットするメディアの数が増えているので、そこにコンテンツをどう供給していくのかということ」と語りました。

 AR事業では、東京・伊豆大島の観光スポットでスマートフォンやタブレット端末をかざすと、説明の動画やアニメーションが再生される仕組みを製作。「ARは既存の展示物に手を加えたり、ハードウェアを導入したりする必要がなく、多言語対応もスムーズ。自治体も導入しやすい」とメリットを挙げました。また、今年3月のジュネーブ国際モーターショーで、SUBARU(スバル)のコンセプトカーのPRに関わったことを報告しました。コンセプトカーはモック(原寸大模型)のため内装がつくられておらず、そのイメージをつかみにくいのが課題。そこで、タブレット端末をかざすと内装の精密画像が表れ、車内にいる感覚で見ることができる仕組みを用意し、好評だったとのことです。

 VR事業では、仮想空間を移動しながら体験できるシステムを共同開発しており、恐竜たちが目の前に現れる仕組みを例示。体験者がゴーグルをつけるのは一般的なシステムと同じであるものの、そのほかは手足にマーカーをつけるだけでよく、従来のワイヤやコントローラーは不要なことを説明しました。

 また、高精細画像に関する取り組みとして、東京の国立科学博物館・地球館で、見学者の歩く速さに合わせて、横のスクリーンに人類誕生までの歴史を4K画像(アニメーション)で映し出していることを紹介。次世代の8Kに関しては、「再現性が極めて高いので、例えばコンサートの様子を、離れた場所で臨場感豊かに見ることができる」と強調しました。NHKから依頼を受けて様々な実験を進めているといい、「この分野の成長は早いのではないか」との見通しも示しました。さらに、プロジェクションマッピングの事例として、東京・新宿西口の高層ビルの窓168枚に、各部屋に設置したプロジェクター70機で様々な映像を映し出したことを報告。ビルが林立し、車や人の往来が激しい場所柄、外部からビルに映写するのは不可能なため、内部から映し出す手法をとり、試行錯誤の末に完成させたことを振り返りました。「やりたいことがあって、困難な状況になっても、関係者とじっくり話をしていけば、突破口や実現方法はきっと見つかる」と力を込めました。

 企業や自治体の支援事業では、動画投稿サイト「ユーチューブ」を活用するPR手法として、牛丼チェーンの吉野家、みそメーカーのマルコメ、宮崎県小林市、宮城県登米市などの動画を作製・アップした例を紹介。「インターネット上に動画を置くことで、企業・自治体は閲覧者とコミュニケーションを図ることもできる」と効用を説きました。続けて、「ネットの世界にはCMや広告とは異なる指標があり、例えば、『どのくらい好まれているか』を追跡的に把握することもできる」と述べました。

柳井研氏
柳井研氏

 ふるさと創生支援に関しては、プロデューサー柳井研氏が説明しました。熊本県産イグサや国産畳のPRのため、イグサを原料に「食べられるお箸(畳味)」を開発したところ、テレビで数多く取り上げられ、SNSでも話題になり、多くの反響があったことをリポート。また、<100人の映像作家を生み出す>プロジェクトとして、熊本県合志市で市民対象の育成塾を開設し、地元をPRする質の高い動画などが生み出されていることも挙げました。

 講演後は、ARの実機体験コーナーが開かれ、聴講者はSUBARU(スバル)のコンセプトカーの画像を見ました。マーカーにタブレット端末をかざすと、あたかもそこにコンセプトカーがあるような感覚になり、驚きの声が上がっていました。

タブレット端末で実際にはない車の画像を見てAR技術を体感する聴講者
タブレット端末で実際にはない車の画像を見てAR技術を体感する聴講者

株式会社ロボットのホームページはこちら(http://www.robot.co.jp/)。

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